2020 COLOR SALON LIBRALY

2020年10月~12月のカラーサロンで発表されたプレゼンテーション内容を、事務局より紹介しています。


SALON 10月29日

「日本の色」サイトの紹介

 中川隆之氏/㈱中川ケミカル 中川色彩研究室 リーダー

 

本日ひとつめのプレゼンは、㈱中川ケミカルさんの中川色彩研究室と画家・流麻二果さんのコラボレーションによる、日本の色を見つめなおすサイト・「日本の色」について、中川色彩研究室リーダー・中川隆之氏よりご紹介いただきました。

あえて色の専門家ではない方に色の話を聞くことで、今を生きる人々の眼差しを採集し、その多様な視点を通して、今の『日本の色』を見つめ直す…そんな素敵なサイトです。

取材をする中川さん自身が、いつも取材を楽しみにしているとのこと。読む人にも楽しんでもらえるよう、ビジュアル的にも美しいものになるよう気を使っていらっしゃるとのことです。プレゼンでは、中川さん自身が特に感銘を受けた、香の伝道師・稲坂良弘さんの取材をピックアップしてくださいました。平和な時代が400年続いた平安時代には、文化も発展し、その時代の日本人にとっては視覚と嗅覚は混然一体となり、多くの人がある匂いから同じ何かを思い浮かべるというような、ある種共感覚のような感覚を、日本人は持っていました。視覚で香を愛でる、香で誰か特定の人を思い浮かべる、感情を思い浮かべる…そんな感覚が、その後西洋から入ってきた文化よりも現代の日本人にも合っているのでは…とお話しされていたのが印象的でした。

ほかにも、㈱中川ケミカルさん商品である、特殊機能のあるシート(コロナ禍においては抗菌作用のあるカッティングシート等々)や、2年おきに開催されるCSデザイン賞の受賞作(※)のご紹介などもいただくことができ、大変興味深いお話をしていただきました。

 

・日本の色サイト https://nihon-no-iro.jp/

CSデザイン賞 https://www.cs-designaward.jp/

CSデザイン賞(YouTube) https://www.youtube.com/watch?v=PuPb70f7zxY



「日本製品の価値を創出  テストマーケティング in Paris

小澤真紀子氏/色彩生活コーポレーション㈱

プランニングマネージャー、カラーコンサルタント

 

本日ふたつめのプレゼンは、小澤真紀子氏(色彩生活コーポレーション株式会社 プランニングマネージャー カラーコンサルタント)より、「日本製品の価値を創出  - テストマーケティング in Paris - 」というタイトルで、フランスで行われたC’est bon le Japonセボン・ル・ジャポン)という、日本文化を発信するイベントで、日本の伝統工芸品である南部鉄器のテストマーケティングをした際のご様子を、お話いただきました。


そもそもフランスからの要望で、南部鉄器をカラー化したのは、30年も前からとのこと。最初はフランスの紅茶ブランド「マリアージュフレール」が、お茶を美味しくいただくために、保温性に優れ丈夫で長持ちする南部鉄器に注目したのがきっかけだそうです。C’est bon le Japonイベントは入場制限がかけられる程の盛況ぶりで、南部鉄器をはじめ日本製品や食への興味を肌で感じられたとの事でした。カラフルに色付けされた南部鉄器には新しい魅力・価値があります。フランスからヨーロッパ全土に広がり、日本での販売も好調とのこと。デザイン構成要素のうち形態を一新しなくとも、色彩でさらに製品価値を創出できると、小澤さん。

ちなみに、これらのカラフルな南部鉄器はいわゆる急須(ティーポット)。従来の鉄器とは違い、内部はホーロー加工されており、直接火にはかけられませんのでご注意ください。日本では、マリアージュフレールや百貨店などでも購入可能とのことです。

海外の方の日本文化への関心の高さや、色彩へのこだわりなどもわかり、大変楽しいプレゼンをしていただきました。

 

・マリアージュフレール 

https://www.mariagefreres.co.jp/category.php?type=1&keyword=THEIERE_TASSE_THEIERE_en_FONTE_du_JAPON

C’est bon le Japon https://cestbonlejapon.com/ja/

Japanese Tea selection Paris https://japaneseteaselection-paris.com/



SALON 11月26日

「コロナ前のニューヨーク 2019

依田彩氏/CLIMAT カラリスト

 

本日ひとつめのプレゼンは、CLIMATのカラリスト・依田氏より、2019年にNYにて撮影された街並みや、建築の色を、事例写真とともにご紹介いただきました。

まずはイーストリバーからのマンハッタン全体の眺め。そして、川沿いの景色では白ばかりではなく、黒やレンガ色の建築物も多く見られたとのことです。川に架かるいくつかの橋は、日本の墨田川の橋とはまた違い、鋼や石など素材の色の美しさがあったとのこと。ダンボ地区のエンパイアストアーズは、古い倉庫を店舗に改装した例で、揃ったサインのほか、外観のレンガに対して内部の石造り+金属の様子などもご紹介いただきました。

ウォールストリート近辺では、暖色系の高層建築物の事例や、ガラスと金属の使い方の事例。また、エンパイヤステートビルから見下ろす街並みでは、ひょろ長い建物が多かったことが印象的だったとのことです。

またNYの街並みは基本的には碁盤の目状となってはいますが、タイムズスクエア辺りは斜めに道が走っており、このことにより人が集うスペースができているとのこと。ほかにも地下鉄入口のやや色味のはっきりした緑、セントラルパークのベンチの緑、イエローキャブだけでなく船やバスなどにも使われている印象的な黄色などが紹介されました。


さらには、パリの芸術橋のNY版ともいえるハイラインを歩いてみた様子や、グラウンドゼロの現在(2019年時)など、盛りだくさんの内容をお話いただきました。プロのカラリストの視点で巡る街並みは、ドラマや映画で見るNYの街並みとはまた違い、コロナ禍もあってか新たな興味を抱かせていただきました。



「デンマークからの報告1

池田麻美氏/オールボー大学アーキテクチャ・デザイン・メディアテクノロジー学科 アーバンデザイン専攻修士課程1

 

本日ふたつめのプレゼンは、日本で色彩景観に関わるお仕事に携わられたあと、現在デンマークのオールボー大学で、都市デザインを学んでいらっしゃる池田氏からのご報告・第1弾でした。

まずはオールボーの街の基本情報や歴史についてお話いただき、大学でのカリキュラムやテストなど、日本との違いについてもお話いただきました。

また、コロナ禍での対策について、基本的には、マスクよりも動線を分けるなど、物理的な距離を取ることで対策している大学内や街の様子もご紹介いただきました。

そして、ポケットパークが多く街全体にゆとりが感じられる点、オールボーの街の様子は、屋根の色が統一されていることや、外壁の色の彩度が高い場合も、統一された屋根色や豊かな街路樹によって、さほど突出した印象とならなかった事例など、ご紹介いただきました。

そして、クリスマスが近いこともあり、クリスマスの飾りつけに注目。派手さはなくとも、繰り返し同じデザインを使うことによる強調の効果や、光を添えるだけのシンプルな装飾など、色彩と都市デザイン両方の視点から街の様々な面に視線を向けて、池田氏の気づきをお話いただきました。

映画や物語の中で知ることのできるステレオタイプの北欧とは一味違った、生き生きとした様子を教えていただき、大変楽しいプレゼンでした。

池田氏の都市デザインに関する考察については、是非、下記ブログもあわせてご参照くださいませ。

 

https://thinkaboutcities.com/



SALON 12月18日

塗料販売においての色との関わり」 NEW

森健夫氏(森商事株式会社 専務取締役)

 

本日のプレゼンは、森商事株式会社より、森健夫氏に「塗料販売においての色との関わり」について、お話いただきました。また、会社での多様な商品の取扱い、納入物件例、商社としての役割等、外からではわからない、販売店としての幅広い仕事内容をご紹介いただくと同時に、社史についてもご紹介いただきました。1964年の東京オリンピックで、聖火台の外側に塗られた耐火塗料を納品したお話や、当時の塗料の販売の様子など、歴史ある森商事さん所蔵の貴重なお写真を交えたお話は興味深く、塗料と日本の近代化との歩みを感慨深く振り返らせていただきました。

 

色とのかかわりとしては、「色彩提案ツールについて」「最近の塗料の色彩について」「色彩とコストについて」と大きく3つのテーマでお話いただきました。塗装会社・営業会社向けのカラーシミュレーションソフトでは、実際の建物の写真に塗装後の色を重ねるため、実現性が高く、周辺の色との調和も検討できるとのこと。また、最近の注文傾向や色彩について、特につや調製をした塗料への需要が高まっており、これは改修の際に素材の雰囲気を維持する際にも、重要な要素となるそうです。「7分つや消し(=3分つやあり)」と、「7分つやあり(=3分つや消し)」など表現方法の違いにも注意が必要です。ほかにも、外壁サイディング面への、既存の柄を塗りつぶさない「クリアー仕上げ」や、パール含有仕上げ。「コンクリート打ち放し仕上げ」などのファンデーション工法など、仕上げにこだわった塗料のご紹介も。また、色彩とコストの関係について、塗料の色域についての表現方法(白淡彩色中彩色濃彩色(無機系)濃彩色(有機系)有機系原色)や、濃彩になるほど高価になることなど、お話いただきました。

質疑応答では、防水材の慣例的な色への疑問や、景観推奨色についてなど、多くの意見が出され、塗料を通して環境色やCMFについても考えさせられる、大変有意義な回となりました。